研究概要 |
住血吸虫ミラシジウム体表繊毛は低浸透圧下で運動し、高浸透圧で停止する。この繊毛運動の開始と停止の調整機構を明らかにすることが本研究の目的である。繊毛運動調整機構がある程度明らかになっているゾウリムシでの研究報告を参考にして、我々はミラシジウム体表の繊毛運動調整機構に下記する仮説を与えそれを裏付ける実験を現在行っている。 作業仮説 繊毛運動開始:メカノレセプターが低浸透圧を受容しcAMPの産出、Aキナーゼの活性化、イオンチャネルの開閉、膜の過分極という一連の反応によって起こる。 繊毛運動停止:高浸透圧受容により、cGMPの産出、Aキナーゼの活性化、イオンチャネルの開閉、膜の脱分極という一連の反応によって起こる。 平成9年度までにcAMPとAキナーゼが繊毛運動開始に関与することを示す実験成績を報告した。本年度は各種イオンチャネルブロッカーとイオノフォアーを用いた実験を行いK+チャネルが繊毛運動に関与することを明らかにした。以下簡単に実験成績を示す。 1) K^+チャネルブロッカー(α-dendrotoxlne,キニン)は水中遊泳ミラシジウムの遊泳率と遊泳速度を低下させる。 2) K^+チャネルブロッカー(TEA,CsCL)は遊泳率を低下させないが、試薬にさらされたミラシジウムは数分間特異な運動(定位置での回転運動)を示す。 3) K^+チャネルブロッカーの中には(apamin,charybdotoxinなど)ミラシジウムの遊泳運動に何ら変化を与えないものもある。 4) Na^+,Ca^<++>チャネルの繊毛運動に関与することを示すデータは得られなかった。 現在膜電位感受性色素を用いて膜の過分極測定法を検討中である。
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