研究概要 |
鹿児島県のツツガムシ病はタテツツガムシが主に媒介していると考えられている.ツルグレン法を用いてタテツツガムシの分布を草地・自然林およびスギ林で比較したところ,自然林で最も多く,草地たスギ林でも多数の個体が生息してた.タテツツガムシの生息地として最適とされている草地だけでなく,これまで適していないと考えられていた自然林やスギ林も重要な生息地となっていた.黒布法を用いて山間部の道に沿って約1km間隔でタテツツガムシの採集を行った.採集地点の植生は自然林・人工林(スギ林・ヒノキ林)・竹林であった.採集を行った3地区では、71〜83%の地点(10/12,9/11,10/14)でタテツツガムシが採集された.鹿児島県でのツツガムシ病患者が多い理由として,タテツツガムシが多様な植生で広範囲に分布していることが考えられた. 鹿児島県北部大隅地区のツツガムシ病患者を対象に,ツツガムシ病リケッチア各株に対する血清抗体価の測定を行い,浸淫するリケッチアの血清型の検討を行った.34名の患者のうち19名(55.9%)がKawasaki株に,13名(38.2%)がKuroki株に最も高い血清抗体価を示した.また,2名(5.9%)の患者は最も高い抗体価を示す株を特定できず,このうち1名はGilliam株,Karp株,Kato株およびKuroki株の4株に,他の1名はGilliam株とKawasaki株の2株に同程度の血清抗体価を示していた.この地区では,ツツガムシ病リケッチアはKawasaki型とKuroki型が分布し,Kawasaki型が優勢であることが示唆された.
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