研究概要 |
鹿児島県のツツガムシ病はタテツツガムシによって主に媒介されると推測されていることから,山間部の道に治って約1km間隔で黒布法によるダテツツガムシの採集を5地区で実施した.地表面に数回押しつけることによりツツガムシが付着した黒布をツルグレン装置に一晩入れ,翌日落下した個体の同定を行った.その結果,52地点のうち41地点(78.8%)でタテツツガムシが見つかり,鹿児島県ではタテツツガムシが広範囲に分布していることが確認された.加世田市・姶良町及び大隅町でアカネズミの捕獲をツツガムシ病の流行が終わった1〜3月に実施し,間接蛍光抗体法によるアカネズミの血清からのツツガムシ病リケッチア抗体の検出を行った.リケッチア抗原はGilliam・Karp・Kato・Kawasaki・Kurokiの5株をそれぞれ感染させたL-929細胞塗抹標本を用い,これに被検アカネズミの20倍希釈血清を反応させた.その結果,捕獲されたアカネズミ18頭のうち10頭(55.6%)からツツガムシ病リケッチア抗体が検出され,野鼠が高率で抗体を保有していることが明らかになった.鹿児島県大隅地区のツツガムシ病流行地の住民血清について,間接蛍光抗体法によるツツガムシ病リケッチア抗体の検出を行った.検査を行った168検体のうち27検体(16.1%)からツツガムシ病リケッチア抗体が検出され,一般住民にもある程度の不顕性感染があると推測された. 本調査の対照として長崎県で行った調査では,タテツツガムシは43地点のうち4地点(7.7%)で見つかり,リケッチア抗体を保有したアカネズミは56頭のうち13頭(23.2%)で,鹿児島県での調査と比較しいずれもかなり低くなっていた.
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