研究概要 |
1.ツツガムシからのツツガムシ病リケッチアの検出 鹿児島県では毎年100例程度のツツガムシ病患者の発生が報告されているが,実際に患者がツツガムシの刺咬を受けた場所を特定できる症例は少ない.姶良町上枦山の山沿いの地区でここ数年間に3症例(そのうちの2例は夫婦)が発生したという情報を得ることができた.この情報に基づいて,患者夫婦の敷地内5ヶ所と裏山15ヶ所で未吸着のタテツツガムシを黒布法によって採集し,70%アルコールで保存した.2step PCR法を用いて,タテツツガムシからツツガムシ病リケッチアDNAの検出を試みた.その結果,敷地内の1ヶ所と裏山の3ヶ所からツツガムシ病リケッチアDNAが検出された.PCR産物を制限酵素で処理して得られたDNA断片の分析により,検出されたリケッチア型はKarp,KawasakiおよびKuroki型であった.これらの結果から,鹿児島県のツツガムシ病媒介者がタテツツガムシであることが実証され,複数のリケッチア型が狭い地区でも混在していることが明らかになった. 2.ツツガムシ発生の周年変化 大隅町飛佐の自然林内で1998年3月〜2000年2月にツツガムシの定期採集を行った.地表の土20kg(2kgを10サンプル)と小型ほ乳類の巣穴の土4kgを毎月採集し,ツツガムシの発生の周年変化を調べると共に地表と巣穴での採集成績を比較した.今回の調査では,地表から14種,巣穴から13種,合計16種が採集された.採集された個体数を同じ土の量で比較すると,巣穴の土からは表面の土の5.6倍の個体が採集された.タテツツガムシの総個体数に占める割合は,表面の土では23.0%であったが,巣穴の土では僅か2.6%であった.この結果は,タテツツガムシの宿主としては,野鼠類より大型のほ乳類が重要であることを示していると考えられた.
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