住血吸虫における宿主遺伝子の局在と寄生との関連

1998 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 09670270
• 研究機関: 茨城県立医療大学
• 研究代表者: 岩村 幸雄 茨城県立医療大学, 保健医療学部, 教授 (90110486)
• キーワード: in situ PCR / マンソン住血吸虫 / 日本住血吸虫 / B2 / enV / ミトコンドリアDNA / IAP

研究概要

ショウジョウ蝿のP因子、脊椎動物のレトロトランスポゾン、植物とアグロバクテリウムのTiプラスミドなどの生物種間を移動する遺伝子が知られている。これまでの研究で、住血吸虫は実験室の終宿主であるマウスの遺伝子を取り込むことが明らかになった。in situ PCR法により、マウスの高度反復配列であるB2は日本住血吸虫の間充織細胞核と生殖細胞核に検出された。マンソン住血吸虫では長期感染(24週)の場合にのみ同様な部位に検出された。また宿主の肝臓内のマンソン住血吸虫の卵内の幼虫でもB2の存在が示された。マウス内在性レトロウイルスtype Cの外被(env)の配列はマンソン住血吸虫雄成虫の間充織細胞核と外被外層小隆起部に、雌成虫では間充織細胞核と卵黄腺に検出された。env配列は外被外層小隆起部細胞質にエピゾーム様に存在しているものと思われた。日本住血吸虫では、この配列の存在は間充織細胞核にわずか認められたのみであったが、日本住血吸虫雌の体内にある卵内にもこの配列が検出された。またenv領域の塩基配列から11種類のプライマーを作成してPCRを行ったところ、住血吸虫内にはenv領域配列の3'側のみが存在していることが明らかとなった。一方、マウス内在性レトロウイルスtype A(IAP)の配列は日本住血吸虫では存在するが、マンソン住血吸虫ではほとんど確認されていない。マンソン宿血吸虫に宿主であるマウスのミトコンドリアDNA配列の一部が存在する複数の個体が得られた。このミトコンドリアの配列は組換えを起こしていた。塩基配列からはいずれも既知の配列との組換えではなかった。

研究成果

• [文献書誌] Yasutomo Sakai: "Acute exercise causes mitochondrial DNA deletion in rat skeletal muscle" Muscle & Nerve. 22・2. 258-261 (1999)
• [文献書誌] 山本和央: "PCR-SSCP分析法を用いたCharcot-Marie-Tooth病の遺伝子異常スクリーニング" 茨城県立医療大学紀要. 3巻. 67-72 (1998)
• [文献書誌] Kotoyo Isobe: "Nuclear-recessive mutations of factors involved in mitochondrial translation are responsible for age-related respiration deficiency of human skin fibroblasts" Journal of Biological Chemistry. 273・8. 4601-4606 (1998)
• [文献書誌] Nobuko Kubota: "Induction of a particular deletion in mitochondrial DNA by X rays depends on the inherent radiosensitivity of the cells" Radiation Research. 148・4. 395-398 (1997)
• [文献書誌] 今瀬敦子: "In situ PCR法を用いたマウス肝臓組織標本上での高度反復配列B2の検出" 茨城県立医療大学紀要. 2巻. 5-9 (1997)
• [文献書誌] Atsuko Imase: "Abnormal Structure and Expression of the K-rev Gene in Neuroblastoma Cell Lines" ASVPI. 2. 1-4 (1997)
• [文献書誌] Yasutomo Sakai: "Hypokinesia causes oxidative damage and mitochondrial DNA deletion in rat skeletal muscle" Journal of Physical Therapy Science. 9. 103-109 (1997)