研究概要 |
肝蛭成虫のカテプシンLは不活性型プレプロカテプシンLとして生合成され、種々の細胞内プロセッシングを受けながら、腸上皮細胞内の分泌顆粒に輸送される。分泌顆粒への輸送選別はトランスゴルジネットワークで行われると考えられるが、その分子機構に関しては不明な点が多い。プレプロカテプシンLは小胞体への移行シグナルとしてのN末端のプレペプチド(シグナル配列)、プロペプチド領域、そして触媒活性を担う成熟酵素領域の3つのドメインから構成されており、このうちプロペプチド領域が分泌顆粒への選別移行シグナルとしての機能を有するのか否かを明らかにするために、平成9年度には以下の実験研究を行った。 (1)培養細胞へのトランスフェクト用組換えプラスミドの構築と精製:真核細胞発現ベクターとして緑色蛍光タンパクをリポーター分子とするpEGFP-N1を用いた。PCRによって増幅された野性型プレプロカテプシンL cDNA(940bp)をこのベクターに組み込むことによって、組換えプラスミド(pEGFP/preproCL)を構築した。さらに大腸菌で複製させたのち、塩化セシウムを用いた密度勾配遠心法によって、培養細胞へのトランスフェクト用組換えプラスミドを精製した。 次に、アミノ酸90個からなるプロペプチド領域を約20アミノ酸程度づつ欠損するようにプライマーを設計し、プロペプチド領域を部分的に欠損した640〜940bpのサイズの種々の変異プロカテプシンL cDNAをPCRによって得た。なお、PCRで増幅した変異型はSer^<-90>-Gln^<-83>欠損型(proΔ8)、Ser^<-90>-Try^<-62>欠損型(proΔ29)、Ser^<-90>-Thr^<-33>欠損型(proΔ51)、Ser^<-90>-Ala^<-15>欠損型(proΔ76)、Ser^<-90>-Asn^<-1>欠損型(proΔ90)の4種類である。 (2)この変異プロカテプシンLを真核細胞内で発現させ、さらに輸送させるにはN末端のシグナル配列が不可欠である。そこで45bpのシグナル配列領域をコードするcDNAをPCRで増幅した。現在、シグナル配列領域をコードするcDNAを変異プロカテプシンL′ cDNAの5′-端に結合させ、4種類の変異プレプロカテプシンL(preproΔ8,preproΔ29,preproΔ51,preproΔ76,preproΔ90)を構築中である。
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