研究概要 |
(1) プロペプチドを部分的に欠損する変異型プレプロカテプシンL遺伝子の作成: プロペプチドはアミノ酸90個からなる領域であり、20アミノ酸程度づつ欠損した6種類の変異型プレプロカテプシンし遺伝子を次のようにして作成した。まずプロ領域を部分的に欠損するプロカテプシンL遺伝子を最初に合成し、得られた遺伝子の5'-端にプレペプチドをPCRによって導入させ、変異型プレプロカテプシンL遺伝子を作成した。それらの変異型はSer^<-16>-Asn^<-33>欠損遺伝子(prepro△18CL),Ser^<-16>-His^<-54>欠損遺伝子(preproΔ39CL),Ser^<-16>-Ala^<-82>欠損遺伝子(preproΔ67CL),Ser^<-16>-Ala^<-103>欠損遺伝子(preproΔ88CL),Ser^<-16>-Asn^<-105>欠損遺伝子(preproΔ90CL)の6種類である。この他、プレペプチドのみ欠損したもの(proCL)や対照として野性型プレプロカテプシンL(preproCL)も作成した。これら7種類の遺伝子を哺乳類細胞発現用ベクター(pEGFP-N1)に挿入することによって組換えベクターを作成した。このpEGFP-N1ベクターは目的タンパク質を発光クラゲ由来の緑色蛍光タンパク(Green Fluorescent Protein,GFP)との融合タンパクとして発現させるものであり、発現したタンパク質は緑色の蛍光を発するためにリアルタイムで観察できるなどの利点を持つ。 (2) 共焦点レーザー走査顕微鏡によるラット下垂体腫瘍細胞(GH_4C_1)におけるGFP融合カテプシンLの局在: 上記の7種類の組換えプラスミドに加え、遺伝子を組み込んでいないベクターのみ(pEGFP-N1)の計8種類のプラスミドを次のようにして、GH_4C_1細胞内に遺伝子を導入した。遺伝子導入はGH_4C_1細胞約8×10^6個/60mm-culturedishに、遺伝子導入のための試薬(FuGene6Reagent)と上記の8種類のプラスミドとそれぞれ混合した溶液を加えるというきわめて簡単な方法で導入した。その後、蛍光顕微鏡ならびに共焦点レーザー走査顕微鏡を用いて、経時的にGH_4C_1細胞内で発現するGFP融合タンパクの局在部位をプロペプチド領域の欠損箇所との関連性を考慮しながら検討した。その結果、対照としてのGFPのみ単独発現させた場合にはGFPは細胞質や細胞表面に局在したのに対して、カテプシンL-GFP融合タンパク質として発現した場合には、GH_4C_1細胞の辺縁部の顆粒に緑色蛍光が観察され、これらの顆粒の性状を明らかにするために、GH_4C_1細胞内の分泌顆粒に局在することがわかっているプロラクチンに対する抗体を用いて検討したが、明確に分泌顆粒であるのかについてはさらなる研究が必要と思われた。
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