研究概要 |
1. virR/virS遺伝子により調節される遺伝子群のdifferential displayによる同定 ウェルシュ菌strain13(野生株)とTS133株(virR/virS変異株)より全RNAを抽出し、逆転写酵素にてアイソトープ標識したcDNAプローブを作成した。このcDNAプローブを用いて、ウェルシュ菌染色体ライブラリーのドットブロットに対してハイブリダイゼーションを行い、野生株と変異株のcDNAを用いたときのドットの濃度の違いを調べた。その結果、異なる濃度を示すクローンが数個存在し、pSB235,pSB343,およびpSB1029の3つのクローンをVirR/VirSシステムにより調節されるクローンとして同定・分離した。 2. virR/virS遺伝子によって調節される遺伝子群の確認 分離した3つのクローンの制限酵素切断DNA断片を標識し、野生株と変異株がら抽出した全RNAに対してノザンハイブリダイゼーションを行ない、各クローンの転写産物のサイズを同定した。また、塩基配列の決定により、cysteine synthase、protein tyrosine phosphataseなどの遺伝子がVirR/VirSによって調節されていることが明らかとなった。 3. 同定された遺伝子の機能解析 同定されたクローンのうち、pSB1029上の遺伝子VR-RNAは、その転写がVirR/VirSによって正に調節され、この転写産物のRNA自身がウェルシュ菌の毒素遺伝子colAの転写を正に調節する二次的調節遺伝子であることが判明した。現在、VR-RNAの性状や機能の詳細について検討中であり、ウェルシュ菌の調節ネットワークに新たな視点が加わることが期待される。
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