研究概要 |
腸炎ビブリオからクローン化した毒素遺伝子tdh1,tdh2,trh1,およびtrh2遺伝子についてtacZ遺伝子をレポーター遺伝子とする融合遺伝子を作成し、minitransposonを利用して大腸菌の染色体中に1コピー組み込んで発現をモニターした。その結果、それぞれの遺伝子の発現レベルの差は主として転写レベルの違いを反映していることを確認した。各遺伝子の転写レベルの違いがbasal levelすなわちプロモタ-の強さの違いによるものではないかと考え、この点を検証した。最も転写レベルの高いtdh2遺伝子とtacZ遺伝子の融合遺伝子を利用して、primer extenshion法によりプロモーターを同定した。次に、融合遺伝子を利用して、tdh1およびtdh2遺伝子のプロモタ-および周辺部の塩基配列を部位特異的変異法により変異させ、発現レベルへの影響を調べた。その結果tdh2遺伝子以外の遺伝子のプロモーターの活性が低いのは、プロモーター内の1塩基に変異が起こっているためであることを示唆する結果が得られた。そこでtdh1遺伝子のプロモーターの変異部位をtdh2の塩基タイプに置換すると、発現レベルがtdh2の発現レベルに匹敵するレベルまで上昇した。以上の結果は融合遺伝子を用いた実験結果であるので、次に完全なtdh1,tdh3,tdh4,およびtdh5遺伝子のプロモーターの変異塩基をを置換した。やはり大腸菌のバックグラウンドで発現レベルの上昇が確認できた。さらにtdh5遺伝子について、腸炎ビブリオ菌株のバックグラウンドでも同様のことが確認できた。したがって、プロモーター部分の特定の1塩基置換がtdh遺伝子保有株のの神奈川県現象を変化させることを証明できた。
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