我々はH.pyloriの膜に細菌・動物には非常に希なコレステリ-ルグルコシド(CGs)が3種大量に存在することを見出し、構造を決定した。3種のCGsはcholesteryl glucoside(CGL;基本構造物)、CGLに脂肪酸が結合してCAG、CGLにphosphatidyl基が結合してCPGである。 今回、まず5%ウマ血清添加液体振盪培養(微好気チャンバー内)での増殖各時期における菌体状況・脂質変化を検討した。H.pyloriは早期対数増殖期(8-12時間培養)では菌体は短いが、後期対数増殖期(24時間培養)では菌体は長くなり、定常期(2日培養)では長い菌体の小凝集塊を形成した。その後、凝集塊は大きくなり、一週間後にはほとんどの菌体は球状化した。脂質は早期・後期対数増殖期ではCPGはほとんど検出されずCGL:CAGはほぼ1:1であり、定常期(我々が現在まで検討してきた菌体)ではCGL:CAG:CPGは約1:2:0.5であった。球状体ではCPGが主要となりCGLは少なく、CGL:CAG:CPGは約1:3:4となった。従って、増殖期の菌体と定常期以降の菌体ではCGsに大きな変化があり、CPGは増殖期ではほとんど産生されておらず、CPGの形成・増加が球状化と関連することが示唆された。また、他の脂質で増殖期と定常期以降の菌体で大きく異なっているものも検出されており、定量を含めて現在詳細に検討中である。 Cholesterol(Ch)を含まない無血清培養ではCGsは形成されないことはすでに判明していたが、free Ch添加無血清培養ではCGsは形成された。しかし、Chester添加ではCGsはほぼ形成されなかった。従って、H.pyloriは外環境にChが存在すると、free Chを選択的に取り込みCGsを形成すると考えられた。
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