研究概要 |
Bartonella henselaeによる血管内皮細胞の増殖促進作用をin vitroとin vivoの系で検討し,平成10年度には下記の結果を得た。 1. 菌と内皮細胞の反応条件および動物種特異性:B.henselae ATCC 49882をヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)の培養系に添加し,HUVECの増殖性をMTT法により測定した。その結果,B.henselae生菌10^7CFU/mlとの混合培養によりHUVECの増殖は,培養4日目でコントロールの約3倍に達した。このような増殖促進作用はヒトの血管平滑筋細胞,線維芽細胞,および小腸上皮細胞では認められず,内皮細胞に特異的な作用であると考えられた。同様の内皮細胞増殖促進はウサギおよびイヌの静脈内皮細胞においても認められた。 2. 作用機序および活性成分の検討:熱または紫外線で不活化したB.henselaeをHUVECと混合培養した場合,増殖促進は全く認められなかった。また,菌体破壊産物の遠沈上清にも増殖促進活性は認められなかった。B.henselaeの親株から線毛を欠如した変異株を分離して上記の増殖促進作用を調べた結果,線毛欠如株においても親株と同程度の増殖促進作用が認められたことから,この反応にはHUVECへの菌の付着や侵入は必要ないものと考えられた。また,菌とHUVECを0.45μmのフィルターで隔絶しても,HUVECの増殖促進がある程度認められたことから(この点については昨年度と若干異なる結果が得られた),増殖促進作用の活性因子は菌の増殖中に培養液中に分泌される物質であると考えられ,現在その物質の分離精製を試みている。 3.実験動物における検討:発育鶏卵漿尿膜,マウスおよびモルモットの皮内,皮下,および腹腔内接種を試みたが,血管腫等の病巣形成は認められなかった。現在,角膜接種による実験を継続中である。
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