研究概要 |
これまでに我々は,動物感染モデルを用いてクリプトコッカスやペニシリウム・マルネッフェイに対する感染防御機構について検討を行ってきた。クリプトコッカスでは,その感染防御にIFN-γ,IL-12,IL-18のようなTh1系のサイトカインが重要なこと,さらにはIL-12とIL-18が相乗効果的にIFN-γの産生を高めることで強力にその感染防御免疫を誘導すること,その中でTNF-α,一酸化窒素(NO)が重要な役割を担っていることを明らかにした。これらの知見に加えて本年度の研究では,Th2サイトカインであるIL-4がこれらに拮抗的に作用することでTh1サイトカインによる行き過ぎた炎症反応を制御する方向に働いている可能生を示唆する結果を示した。一方我々は,IFN-γ,IL-12,IL-18,そしてIL-12/IL-18の遺伝子を欠損したマウスを用いることで,クリプトコッカスに対する感染防御におけるこれらサイトカインの必要性を明確にするとともに,クリプトコッカスに特異的なTh1細胞の誘導においてIL-12が必須なこと,IL-18は単独ではTh1細胞を誘導できないもののIL-12の作用を強力に高めることも明らかにした。また,膜結合型CD4分子を欠除し代わりに血清中に可溶型CD4が増加している突然変異マウスが,エイズ末期の病態と類似しておりその有用なモデルになりうることを臨床的解析を含めて明らかにするとともに,可溶型CD4がTh1サイトカインの産生抑制を介して直接クリプトコッカスに対する感染防御能を低下させることを証明した。このことは,エイズ末期において血清中に増加した可溶型CD4が免疫不全をさらに助長する可能生を示唆しており,今後更なる検討が必要である。ペニシリウム・マルネッフェイについては,ヒト末梢血好中球が各種サイトカイン刺激によってその抗真菌活性が高まること,その中ではGM-CSFが最も強力であること,そしてその殺菌機序としてはある種の顆粒内殺菌物質が重要な働きをしていることを明らかにした。
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