これまでに我々は、動物モデルを用いてクリプトコッカスやペニシリウム・マルネッフェイに対する感染防御機構について検討を行ってきた。本研究では、クリプトコッカスの感染防御がTh1-Th2サイトカインバランスによって巧妙に調節されることを明らかにした。Th1サイトカインであるIFN-γは感染防御に、逆にIL-4は感染を悪化させる方向に作用した。クリプトコッカスの強毒株は脳への播種性感染を起こして全マウスを死に至らしめるが、肺内でのサイトカイン産生動態を調べてみると、Th2サイトカインは早期から産生されるものの、Th1サイトカイン及びその誘導に重要なIL-12、IL-18の産生は極めて弱かった。こうして、強毒株はTh1-Th2サイトカインバランスをTh2側にシフトさせることで宿主の感染防御機構からエスケープしている可能性が考えられた。実際に我々は、同じクリプトコッカス株がマクロファージからのIL-12産生を抑制した。さらに、強毒株の感染ではTh1サイトカインだけではなく、感染防御に重要なリンパ球やマクロファージの遊走を引き起こすことが知られているCCケモカインやIP-10の産生がみられず、感染局所でのこれら細胞の浸潤が極めて乏しかった。一方、IL-12を投与されたマウスでは、Th1サイトカイン及びCCケモカイン、IP-10の産生が著明に誘導され、局所へのリンパ球およびマクロファージの浸潤及び肉芽腫性炎症反応が明瞭にみられるようになった。また、各種サイトカインの遺伝子を欠損したマウスを用いた研究から、IL-18及びIL-12が感染防御に重要なサイトカインであることも証明した。 ペニシリウム・マルネッフェイは、活性化マウスマクロファージの殺真菌活性に対して酵母とコニディアでは感受性が異なり、前者が殺菌されるのに対して後者は抵抗性であった。殺菌機構には、一酸化窒素が重要であり活性酸素は直接には関与していなかった。一方、ヒト好中球もある程度の殺菌活性を示したが、本活性はGM-CSFなどのサイトカインによって強く増強された。この殺菌機構には活性酸素は関与しておらず、顆粒内の殺菌物質が重要な働きをすることも明らかにした。
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