細菌内毒素リポ多糖(LPS)中のリピドA部分は種々のメディエーターの産生を誘導しエンドトキシン活性発現の中心的な役割を果たす。リピドA類縁構造に対する応答で、ヒト系細胞とマウス系細胞に違いのあることが指摘されている。本研究では、構造的に関連した一連の単糖体リピドA類縁化合物を用いて、それらのヒトマクロファージ系細胞に対するサイトカイン(TNF-α及びIL-6)産生誘導効果をマウス系細胞に対する効果と比較検討した。その結果、LPS様活性化作用を示す物質としてヒト系細胞に認識されるためのリピドA類縁化合物の構造的特徴として、単糖体か二糖体かにかかわらず分子を構成する成分として、D-グルコサミン、リン酸基、炭素鎖長がC14とC12のアシル基、を1:1:3の割合で持つことが求められ、それはマウス系細胞による構造要求性に比べより厳密であることを明らかにした。一方、LPSの作用に対してヒト系細胞で抑制的作用を示すリピドA類縁構造は幅広く、マウス系細胞では活性的作用あるいは抑制的作用を示す構造と同程度の範囲にまで及ぶものであった。現在、LPSの刺激シグナルを細胞内に伝える真の受容体の究明が大きな課題であるが、この受容体の構造が動物の種により異なるのが、リピドA類縁構造に対する応答性の差の原因であることが示唆されている。本研究の成果は、この受容体によるリピドA類縁構造の認識段階で、サイトカイン産生にまで至る生産的なシグナルとして認識されたか、LPSの作用を抑制する非生産的なシグナルとして認識されたかに基づいて得られたものである可能性があり、想定されているLPS受容体の究明やLPSのシグナル伝達におけるその調節機構、更にはヒト系細胞とマウス系細胞でのこの受容体の特性の解明などに貢献できるものと考える。
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