研究概要 |
Helicobacter pyloriの病原因子のうち,熱ショック蛋白heat shock protein(HSP60)は本菌の胃上皮細胞への付着因子として作用することをin vitroの実験系で明らかにした。また本菌をHSP60に対するモノクローナル抗体(H20)で前処理した後,無菌(GF)マウスに経口投与した結果,対照に比べ定着菌数の著明な減少が認められた。本結果はHSP60がin vivoでも本菌の胃上皮細胞への付着に関与する可能性を示している。 HSP60のGFマウスへの経口投与は胃粘膜病変を誘導しなかった。 しかし,HSP60の経口投与後,本菌をチャレンジした場合,対照(PBS投与)に比べ,有意に強度に胃粘膜炎症が引き起こされた。定着菌数はHSP60の前投与により対照に比べ有意に低く,HSP60がワクチンとして作用し得ることが示唆された。 H.pylori定着GFマウスを用いて,イミダゾール誘導体およびプロバイオティックス(Lactobacillus salivarius,Clostridium butyricum)の除菌効果を解析した。イミダゾール誘導体投与後1週で菌数は1/50に減少し,2週後にH.pyloriは検出限界以下となった。また,L.salivariusおよびC.butyricumの投与により3週後にH.pyloriが完全に除菌された。これらの結果はGFマウスが副作用のない抗菌剤および抗菌因子の開発やその評価に有用であることを示している。
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