日和見感染症の主要起因菌である緑膿菌の各種薬剤に対する自然耐性ならびに高度多剤耐性に深く関わっている薬剤排出ポンプ(MexAB-OprMポンプ)は、二種類の内膜タンパクであるMexAおよびMexBと、外膜タンパクであるOprMから構成されている。これらのサブユニットタンパクのうちMexAとOprMは各々のN末端側にリポプロテインの共通配列を有しており、共にリピドによる修飾を受けているものと考えられている。特に、MexAに関しては本研究を通してリポプロテインの共通配列以降の大部分がペリプラズムに局在していることが明らかとなり、内膜へのアシカリングが如何になされているか興味が持たれていた。そこで、本研究において、[^3H]-パルミチン酸のMexAへの取り込みを抗MexA抗体を用いた免疫沈降法で検討した。その結果、MexAは[^3H]-パルミチン酸でラベルされたことからリポタンパクであることが明らかとなった。以上の結果より、MexAB-OprMポンプを構成する内膜タンパクであるMexAはN末端側から24番目のシステインがリピド修飾を受けており、この修飾リピドがMexAの内膜へのアシカリングに何らかの寄与をしているものと考えられた。これらのことからMexAは修飾リピド以降の領域の全領域がペリプラズムに露出しているペリフェラルタンパクとして機能し、この親水性領域がMexBあるいはOprMと相互作用をしてMexAB-OprMポンプを構成して薬剤を排出しているものと考えられた。
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