日和見感染症の主要起因菌である緑膿菌は各種薬剤に対して自然耐性および高度多剤耐性を示すため問題となっている。最近本菌のこれらの耐性に染色体上のmexオペロン(mexA-mexB-OprM)にコードされている薬剤排出ポンプ(MexAB-OprMポンプ)が深く関与していることが明らかとなった。本研究ではMexAB-OprMポンプの薬剤排出メカニズムを理解する第一歩として、本ポンプを構成する各サブユニットの欠失変異株を作成し、薬剤感受性に及ぼす影響を検討した。さらに、ポンプ本体であるMexBと外膜チャネルタンパクであるOprMを連結していると考えられている内膜タンパクMexAに焦点を合わせ、MexAの膜トポロジーと内膜局在性について、β-ラクタマーゼをマーカーとした遺伝子融合法を用いて解析した。その結果、78クローンのin-frame融合遺伝子を得た。こららのクローンを持つ全ての形質転換体はアンピシリンに耐性であった。また、MexAはそのN末端側にリポプロテインの共通配列(LSGC)を持っておりこのシステインがアシル修飾を受けていると考えられている。そこでMexAが本当にリピドによる修飾を受けるか否かを、[^3H]-パルミチン酸のMexAへの取り込みを抗MexA抗体を用いた免疫沈降法で調べることによって検討した。その結果、MexAはリポタンパクの共通配列内の24番目のシステインがリピドによる修飾を受け、それ以降の領域はすべてペリプラズム内に露出していることが明らかとなった。
|