研究概要 |
【目的】申請者らは歯周病原菌であるPorphyromonas gingivalis(Pg)由来のリピドAが腸内細菌由来の活性型リピドAに比較してマウスに対して低毒性であるにもかかわらず,ヒト由来のTHP-1細胞やヒト歯肉線維芽細胞に対して極めて強いサイトカイン産生誘導活性を示すこと,さらにはエンドトキシン不応答性C3H/HeJマウス細胞を活性化するという興味深い現象を見いだしている.しかし,天然由来の精製リピドA標品には微量の蛋白質の混入が認められ,この蛋白質が活性発現に影響を及ぼしている可能性がある.本年度の研究では真の構造と活性の関係を検討するためPg-リピドAアナログの化学合成を試みた. 【方法】(R)3-OHiCl5及び(R)3-OHiCl7は,それぞれiCl3とiCl5からメルドラム酸縮合,還元及び光学分割を経て調製した.保護基の導入,グルコサミンへの脂肪酸・リン酸の導入,グリコシデーション及び脱保護は従来法により行った.LSI-MS並びにNMR解析は,VGZAB-2SEQ及びJEOL A600を用いて行った. 【結果】今回は,1及び4'位にリン酸基を持つβ(1→6)結合グルコサミン二重体バックボーンの2,2',3及び3'位にそれぞれ(R)3-OHiCl7,(R)3-O-(Cl6)-iCl7,(R)3-OHCl6及び(R)3-OHiCl5が結合したPg-リピドAアナログを合成した.同じリピドAアナログの化学構造はLSI-MSおよびNMR解析により確認した.平成10年度は,C3H/HeJマウス由来細胞に対する活性を中心にPg由来の精製リピドAおよび合成リピドAを用いて種々の生物活性を検討する予定である.
|