CM2は、M遺伝子の転写産物unspliced mRNAがもつ42kDaの蛋白をコードしうる読み取り枠に由来されると考えられる。unspliced mRNAの731〜748番めには開始コドンが3つ連続しており、そのいずれかが開始コドンとして使われるとすれば、16kDaの蛋白が合成されることになり、CM2の分子量とよく符合する。しかしこれが事実であれば、リボソームは上流の12ケの開始コドンをスキップすることになり、ポリオウイルス等に認められるInternal ribosomal entry site (IRES)を利用した翻訳機構の想定を余儀なくされる。この想定の正否を検討し、以下の成績を得た。 1.pME18SベクターのSRαプロモーターの下流にM遺伝子を組み込み、COS細胞にトランスフェクションしたのちに、RIP法によりCM2の発現の有無を検討した。731〜748番めに連続する3つの開始コドンすべてを破壊する変異をM遺伝子に導入したが、CM2の合成は全く阻害されなかった。一方、705番めの1塩基を欠失させ、frameshiftにより42kDa蛋白がC側領域のCM2の読み取り枠を欠うと、CM2の合成は全く見られなくなった。したがって、CM2は、IRESを利用して翻訳されるのではなく、42kDa蛋白の解裂によって生ずると推測された。 2.374個のアミノ酸からなる42kDa蛋白の予測アミノ酸配列の解析から、241-252番めに疎水性領域があり、そのすぐ下流に2カ所(254と259番め)のシグナルペプチダーゼによって認識されうる部位が認められた。そこで241-252番めの疎水性領域がシグナル配列として働き、42kDa蛋白が小胞体腔内に貫入するや否や、254または259番めでシグナルペプチダーゼによる切断を受け、そのC側産物としてCM2が生ずるとの作業仮説を立てた。259番めの認識部位を潰すとCM2が完全に消失すると共に、42kDa蛋白の増量が認められたことから、259番めがシグナルペプチダーゼによって認識されると推測された。
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