研究概要 |
ヒトT細胞白血病ウイルス(HTLV-I)は成人T細胞白血病(ATL)の原因となるレトロウイルスである。HTLV-Iはin vivoではT細胞の腫瘍化を引き起こすが,in vitroではヒト由来の多くの培養細胞種に感染することが知られている。近縁のHIVではCD4分子や他の補足レセプターが同定され感染機構の研究が進んだが,HTLV-Iのレセプターはまだ同定されていない。本研究において,エンベロープ蛋白質をコードするenv遺伝子の各領域をグルタチオントランスフェラーゼ(GST)融合型の組換え蛋白質として大腸菌で発現させた。ウイルス感染に対する中和抗体のエピトープ配列となるgp46の部分コード領域を含む組換え蛋白質(GST-AX)は可溶性で発現量が多く,これをグルタチオンセファロースカラムでアフィニティ精製した。一方,ヒト培養細胞のJurkat株から膜画分を精製し,蛋白質のビオチン化を行った。グルタチオンセファロース樹脂に固定したGST-AXとビオチン化細胞膜蛋白質を混合し,バッファーで洗浄後SDS-ポリアクリルアミド電気泳動を行い,GST-AXと特異的に結合する蛋白質を検出した。対照として用いたGSTと非特異的に結合する蛋白質を除き比較検討した。その結果,従来検出されていたp35/p31以外に分子量60および40kDa付近に複数の蛋白質が検出された。これらをエンベロープ結合蛋白質の候補と考え,そのcDNAクローニングのためにアミノ酸配列決定のための大スケールでの精製を進めた。また,酵母のツ-ハイブリッド系を利用して,gp46の部分コード領域と結合する蛋白質のcDNAをスクリーニングしている。
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