研究概要 |
パラミクソウイルス亜科のうちルブラウイルス属の6種(PIV2, SV41,SV5,PIV4A,MuV,NDV)のHN蛋白およびF蛋白を様々な組み合わせでHeLa細胞に同時発現させて細胞融合の有無を調べたところ、同じウイルスのHN蛋白とF蛋白の同時発現による細胞融合が観察された。注目すべきことに、PIV2のF蛋白はMuVのHN蛋白との同時発現でも細胞融合を誘導したが、より近縁のSV41のHN蛋白とでは融合を起こさなかった。一方、SV41のF蛋白はPIV2のHN蛋白との同時発現でも細胞融合を誘導したが、MuVのHN蛋白とでは融合を起こさなかった。したがってHeLa細胞での細胞融合誘導系においてはPIV2とSV41のF蛋白のHN蛋白に対する特異性が異なること、またPIV2とSV41のF蛋白はルブラウイルス内で最も一次構造の近縁性を有しておりPIV2とSV41との(融合活性を持つ)キメラF蛋白が多数作製できたことから、それらのHN特異性の解析を行った結果、以下のことが明らかになった。 1)PIV2F(551A.A.)の255-370(Cys-rich領域のN末側半分を含む)の領域および452-494(TM近傍のHeptad repeatからTM内の数アミノ酸にかけて)の領域がMuVのHN蛋白(582A.A.)との相互作用に関わっていた。 2)この領域よりやや広い領域(227-370および452-494)がPIV2のHN蛋白(571A.A.)との相互作用に関わっていた。 さらに、これらのF蛋白のキメラとPIV2とSV41のHN蛋白のキメラとの同時発現の結果から、上記のPIV2のF蛋白上の2つの領域(Cys-rich領域の一部およびTM近傍のHeptad repeatを含む)がPIV2のHN蛋白上の37-94の領域(Stalk領域のTM近傍部分)と相互作用することによりF蛋白に構造上の変化が起こり、細胞融合が誘導されることが示唆された。
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