1.パラインフルエンザウイルス2型(PIV2)とシミアンウイルス41(SV41)のF蛋白のキメラ解析により、細胞融合誘導におけるHN蛋白との相互作用に関わる領域を同定した。2.シミアンウイルス5(SV5)WR株のF蛋白はHN蛋白との共発見で細胞融合を誘導したが、単独発現での融合能はなかった。W3A株のF蛋白は単独発現で細胞融合を誘導したが、これはPro-22(F2のN末端より3番目)に起因することが判明した。また、蛋白分解酵素に対する感受性も異なり、還元状態でW3A株のF蛋白の分解物が検出されることから、F1のCys-rich領域近傍が構造変化により露出することと細胞融合能との関連が示唆された。3.WR株のLeu-22をProに改変した変異F蛋白(L22P)とイヌパラインフルエンザウイルスT1株のF蛋白とのキメラ解析によりF1のHeptad Repeat1領域に位置するGlu-132も単独融合能に関与することが判明した。4.L22PはBHK細胞などでは(HN蛋白非依存性の)細胞融合能を示すが、L929細胞などでは細胞融合能を示さない。そこでL22Pを構成的に発現するL929細胞株(L22P-L)を作製した。L22P-L細胞とBHK細胞を混合培養すると細胞融合が誘導された。この結果は細胞表面にF蛋白の受容体がある可能性を示唆している。5.L22P-Lを免疫原としてHN非依存性の細胞融合を阻止できる抗体(mAb21-1)を得た。6.mAb21-1は細胞内膜系にあるWR-F蛋白には結合できたが、細胞表面にあるWR-F蛋白には結合できなかった。対照的にL22Pに対しては細胞内局在によるmAb21-1の結合性に相違は認められなかった。従って、mAb21-1は立体構造依存性の抗体であり、WR-F蛋白が細胞内でF1とF2に開裂することによって構造変化が起り、そのエピトープが隠ぺいされるものであると考えられた。言い換えればL22Pにおいては通常起るべきこの構造変化になんらかの抑制がかかっており、このことがHN非依存性の細胞融合能に反映されている可能性が強いことが判明した。
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