研究概要 |
VAP21は狂犬病ウイルスの成熟粒子に取り込まれる細胞由来の微量成分の一つとして見つかったもので,これを認識するモノクローナル抗体を用いて本抗原をコードするcDNAクローンを分離した.cDNAの塩基配列をジデオキシ法により決定し,コードされているポリペプチドのアミノ酸配列を比較したところ,VAP21はCD99と一部似る部位(特に膜貫通部位と思われる領域付近)をもつI型膜貫通タンパクであることが分かった. このcDNAを大腸菌で発現させて得られたポリペプチドを抗原としてウサギを感作して抗体を作成し,種々の臓器や組織および各種の培養細胞系におけるVAP21抗原の発現状況を検討した.ハムスターでは,ほとんどの臓器においてVAP21抗原が検出されたが,臓器によって電気泳動における移動度が異なり,このことは臓器によって異なるプロセッシングを受けることを示唆する. VAP21は狂犬病ウイルスのエンベロープに組込まれ,エクトドメインが粒子表面に露出していることが明らかとなり,さらにエンベロープを持つほかのウイルスについてVAP21の粒子への取り込みを調べたところ,水泡性口内炎ウイルス,シンドビスウイルス,単純ヘルペスウイルス(1型)の精製ウイルス粒子内にもVAP21が検出されたことから,VAP21がウイルスのエンベロープ形成あるいは粒子形成過程に関与する可能性が示唆された. さらに,こられのウイルスとVAP21との相互作用の面を検討したところ,VAP21はウイルスのマトリックスタンパクあるいは非糖膜タンパク質と結合することが示唆された. 本年度の研究から以上のことが明らかになった.
|