研究概要 |
本年度は3つの観点から研究を進めた. 1. ウイルスの複製におけるVAP21の役割を明らかにするために,他のエンベロープを持つ種々ウイルス(例:水疱性口内炎ウルイス(vsv),単純ヘルペスウイルス,シンドビスウイルス)についてvap21との関わりを調べた.個々のウイルス毎に特定のウイルス蛋白と細胞内での選択的結合があり,これがウイルス粒子へのVAP21取り込みの前提となることが示唆された. 2. VAP21のウイスル産生における役割を調べるために,ハムスター由来の種々の細胞を用いて,VAP21発現の程度とウイルス産生量を比較した.VAP21発現の多いBHK21細胞,発現量の少ないHmLu細胞および発現しないCHO細胞でのVSVの複製を比較したところ,VAP21発現量とVSV複製効率との間に正の相関性が見られた.CHO細胞においては,BHK21細胞に匹敵するウイルスのRNAや蛋白が合成されたにも関わらず,成熟VSV粒子の形成は非常に少なく,VAP21がウイルス粒子形成に関わる可能性を示唆する. さらに,CHO細胞にVAP21遺伝子を導入しVAP21発現細胞の樹立を試みたが,VAP21発現により細胞死が引き起こされ,樹立細胞は得られなかった.次に,BHK21細胞にVAP21アンチセンスRNAを発現させてVAP21産生を抑制することを試みたところ,ある程度VAP21産生量の減少した細胞が得られ,このような細胞におけるVSVの産生量はかなり現象していた. 3. VAP21のcDNAに置換変異によりメチオニンコドンを導入し,遺伝子発現系におけるVAP21の^<35>S-メチオニン標識により,VAP21の生合成過程やウイルス蛋白との結合の解析を可能にした.その結果,VAP21のN-末端のシグナルペプチドが切り放されること,結合実験からVAP21は単一の蛋白として振る舞うのではなく,いくつかの他の細胞成分とアセンブリしたものがウイルスの特定の蛋白と江告ごうすることが示唆された.
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