Rev/Rexのコファクターを吸収することによって、野生型のRev/Rexの機能を優勢阻害するRexのmutantであるTAgRexによってB型肝炎ウイルスのmRNA輸送は阻害を受ける事が分かった。さらに、我々はCRM1の過剰発現によるこの阻害からの回復が不十分であることを示した。これは、Rev/Rexの機能が完全に回復するのと対照的であった。これらのことから、B型肝炎ウイルスmRNAの輸送にはhCRM1そのものではなく類似体が関与していることが推定される。そこで、本年度の研究の目的はB型肝炎ウイルスのRNA輸送に関与する輸送因子、特にhCRM1類似体を同定することとした。まず、そのための方法としてhuman crm1 geneの各領域に対するprimerを作成して、relax conditionでRT PCR法により、HeLa細胞のcDNAの増幅を行った。増幅してきたcDNAの塩基配列を決定したところ全てhCRM1そのものであった。次に、Rev/Rexの働きにくい細胞として知られているアストロサイトーマからRT-PCRによってcDNAの増幅を行った。塩基配列を決定したところ、hCRM1と非常によく似たcDNAがクローンされたことが分かった。89%の塩基と97%のアミノ酸がhCRM1と同一であるCDNAで、我々はu-CRM1と命名した。B型肝炎ウイルスmRNAの輸送への関与を検討中である。
|