研究概要 |
本研究の目的は、ウイルス粒子形成過程におけるゲノムRNA分節の集合機構とパッケージング機序を解明することにある。そこで平成9年度においては、RNA分節の集合機構を明らかにするために、各RNA分節はそれぞれ識別可能であるのか、さらに各RNA分子上には識別シグナルが存在するのかなどについて解析した。 本研究では、株化細胞#76にDIウイルス粒子からクローニングしたPAまたはPB2ポリメラーゼ遺伝子由来のDI-RNA(PADI-RAN,PB2DI-RNA)およびそれと同一の非コード領域を持つ組み換え体CAT-RNA(PA/CAT,PB2/CAT)を同時に導入すると、組み換え体CAT-RNAのCAT発現が特異的に抑制されるという性質を利用した。このことは、DI-RNAの標的となる領域は、組み換え体CAT-RNAの非コード領域内に存在することを示している。そこで、この領域を同定するために、PA、PB2それぞれの非コード領域の5〜7塩基を連続的に互いに置換したキメラ型非コード領域を持つCAT-RNAを作成し、PB2DI-RNAによってCAT発現の抑制を受ける非コード領域の構造を解析した。 その結果、組み換えCAT-RNAの3'末端の13-19番目の塩基配列がPB2遺伝子由来であるとPB2DI-RNAによって特異的に抑制され、逆に、この領域がPA遺伝子由来であると抑制は全く起こらないことが分かった。次に、DI-RNA分子上の抑制領域を同定するために、3'および5'非コード領域に種々の欠損変異を導入した。その結果、3'13-19番目の塩基を欠落させたDI-RNAは、標的となるCAT-RNAの発現を全く抑制しなかった。 以上の成績から、ウイルスゲノムRNA分節は各分節ごとに識別可能であること、さらにその識別シグナルは、3'端の7塩基であることが明らかになった。
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