研究概要 |
今年度は、昨年度に継続して"IL-8産生に関わるCMV遺伝子の解析"に関する研究を行った。これまでの一時発現系を利用した遺伝子導入実験による解析から、IL-8遺伝子発現およびタンパク産生に関与するCMV遺伝子は、少なくともその一部は前初期遺伝子(IEl,IE2)領域のIEl部位である可能性を報告してきた。今年度の研究ではこのことを更に明確にする為に、IEl,IE2遺伝子鎖域を含む種々のパーマネント細胞系を樹立し検討した結果、以下の成績が得られた。 CMVのIEl,IE2遺伝子領域をpSV2-neoベクターに構築したものを、Astrocytoma由来のCMV弱許容細胞(U373MG)に遺伝子導入し、G418Sulfateを含む選択培地を用い各種パーマネント細胞株を得た。これらの細胞培養液中のIL-8タンパク量を測定したところ、IEl導入細胞株が最大であった。また、IL-8遺伝子上流域の各種転写部位を有するルシフェラーゼ発現ベクターをこれらの細胞へ遺伝子導入し、ルシフェラーゼ活性の誘導を標的に比較検討したところ、IEl導入パーマネント細胞株がIL-8遺伝子発現に関与しており、特にNF-kBとAP-1転写活性部位を特異的に活性化することが示唆された。さらにImmunostainingによる二重染色による観察から、同じ細胞にIEl抗原とIL-8抗原を同時に発現しているのが見い出された。この事は、CMVのIEl遺伝子発現細胞がNF-kBとAP-1の活性化を介して、IL-8をも産生することを示したことになる。これらの事から、一時発現系を利用した昨年の結果と同様にIL-8産生に関与するCMV遺伝子は、少なくともIEl部位であることが再確認された。以上の知見は、第13回ヘルペスウイルス研究会(富山)、第35回日本細菌学会中部支部総会(名古屋)および第46回日本ウイルス学会総会(東京)において発表された。
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