研究概要 |
これまでに、IL-8によりサイトメガロウイルス(CMV)の複製及びDNA合成能が促進される事を報告してきた。一方、今回の研究プロジェクトのうち"IL-8産生に関わるCMV遺伝子の解析"に関する研究計画において、IL-8産生及び遺伝子発現にCMV遺伝子のどの部位が関与しているかについて検討し、IL-8とCMVの相互の関係を明らかにした。 CMV前初期遺伝子(IE1,IE2)領域を含む種々ベクターを構築し、遺伝子導入による一時発現系及びIE1,IE2を発現するパーマネント細胞系を作成し実験に供した。まず一時発現系による実験で、IL-8遺伝子上流域の各種転写部位を有するルシフェラーゼ発現ベクターと同時に遺伝子導入し検討したところ、IE1導入細胞の方がIL-8遺伝子発現に関係しており、特にNF-kBとAP-1転写部位を特異的に活性化する事が示唆された。さらに培養液中のIL-8タンパク量を測定したところ、IE1導入細胞が最大であった。これらの成績は、IE1,IE2をパーマネントに発現する細胞を用いた場合でも同様であった。また免疫二重染色による観察から、同一細胞がIE1抗原とIL-8抗原を同時に発現しているのが見い出された。この事は、CMVのIE1遺伝子発現細胞がNF-kBとAP-1の活性化を介して、IL-8を産生することを示したことになる。更にゲルシフトアッセイ法による解析から、NF-kBと特異的に結合する核内タンパクは、IE2産生株と比較してIE1産生株の方がより多く移行している事が見い出された。以上の事からIL-8産生に関与するCMV遺伝子は、少なくともIE1部位の関与が明らかであり、その機序としてNF-kBとAP-1両転写部位の活性化を介していることが考えられた。今後、これらの機序の詳細を明確にしその全体像を明らかにするために、IE1遺伝子欠損CMV株を作成し検討していく予定である。
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