研究概要 |
ヒト肝細胞由来のPH5CH細胞とヒトT細胞由来のMT-2細胞をクローン化し、C型肝炎ウイルス(HCV)に高感受性を示すクローン化細胞を幾つか得た。MT-2細胞由来の3種類のクローン(MT-2A,MT-2B及びMT-2C)とPH5CH細胞由来の3種類のクローン(PH5CH1,PH5CH7及びPH5CH8)にHCV陽性血清1B-2を添加し、経時的にどのようなHCV分子種が増加してくるかを検討した。接種した血清1B-2由来のHCV分子種の多様性はHCV遺伝子内の超可変領域1(HVR1)を調べることにより解析した。その結果、血清1B-2内には3種類のHCVタイプ(I,II及びIII)が存在し、同じタイプ間でも少しずつ配列の異なるHCV分子種が多数共存した状態となっていることが分かった。上記のHCV感染細胞から経時的にRNAを抽出し、HCV分子種の分子マーカーとしてHVR1を用いて、どのようなHCV分子種が各クローン化細胞で増殖しているかを検討した。血清1B-2由来のHVR1のcDNAクローンの塩基配列を多数解析した結果、制限酵素HpaIIでの消化物の長さがHVR1のTypeにより異なることを利用してHVR1をtypingできることが分かった。次に、それぞれのRNA試料からHVR1を含む領域をRT-PCR法にて増幅し、増幅産物を制限酵素HpaIIで消化して、HVR1のtypingを行った。その結果、HCV感染後2-3週間の間に、MT-2細胞由来の3クローンではタイプIのHVR1を持つHCVが主要なHCV分子種となっていたが、PH5CH細胞クローンではタイプIIのHVR1を持つHCVが主要なHCV分子種になっていることが分かった。この結果の一部は実際にHVR1の塩基配列を決定することにより確認した。これらの結果から血清1B-2には肝細胞指向性とT細胞指向性のHCVが含まれていることが示唆されるのと同時に、細胞指向性を決定している因子がウイルス遺伝子側にあることも示唆された。分子マーカーとして用いたHVR1以外にこのような細胞指向性決定領域が存在していることが予想されたことから、タイプIとタイプIIのHVR1を含むHCV遺伝子(5´側の3.4kb)をクローン化して、複数のクローンについて塩基配列を決定して比較検討している。 HCV陽性子宮がん及び卵巣がん患者のリンパ節に比較的多量(約10^4 HCV/μg RNA)のHCVが存在することを明らかにし、現在、どのようなHCV分子種がリンパ節において増殖しているかを検討している。
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