本研究はC型肝炎ウイルス(HCV)による肝炎、肝癌の発症のメカニズムを明らかにする目的でHCVタンパク質発現培養肝細胞の細胞性遺伝子の発現変化ならびにHCV遺伝子あるいは遺伝子産物と相互作用を行う細胞性因子を解析するものである。 1.HCVタンパク質が調節的に発現することが可能であるプラスミドを用いて安定遺伝子導入肝細胞の樹立を行った。発現プラスミドにはテトラサイクリンによって発現調節可能な転写プロモーターを有するものを用いた。一時的な遺伝子導入実験からこれらの遺伝子調節発現系が有効であることが確認できたが、作成した安定遺伝子導入細胞では発現誘導時にすべてのウイルスタンパク質が確認されたほど効率の高い発現は得られないことがわかった。対応索として以下の3種類について行っている。(1)誘導発現を正確に行えるクローンの選択、(2)新規に昆虫ホルモンであるエクジソンを誘導剤として使用する誘導発現系の作成、そして(3)一時的な遺伝子導入細胞を特異的に濃縮する方法の確立。 2.HCV遺伝子あるいは遺伝子産物結合する細胞性タンパク質の検出を行っている。UVクロスリンク法等を用いてHCV遺伝子3'末端に結合する細胞性タンパク質を見い出しこれがポリピリミジントラクト結合タンパク質であることを明らかにした。 3.現在一時的な遺伝子導入細胞を濃縮する方法が確立されHCVの全タンパク質を一時的に発現する細胞を80%以上の濃縮率で得られるようになったため、これらの細胞で特異的な発現調節を受けている既知の細胞性遺伝子のスクリーニングを進めている。さらに未知の遺伝子の検出についてはRDA(Representational Difference Analysis)法による解析を行っている。
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