研究概要 |
T細胞活性化には特異的抗原によるT細胞受容体(TCR)を介したシグナル伝達およびCD28等のT細胞表面抗原を介するシグナル伝達が必須である。これらの各シグナル伝達にはチロシンキナーゼが関与することが明らかとなっているが、その基質となり細胞増殖にいたる経路には不明な点も多い。我々はチロシンキナーゼの基質となり、IL-2,GM-CSFを初めとするサイトカインシグナル伝達に関与し、c-myc誘導および細胞増殖に必須な新規アダプター分子STAMを同定した。本研究ではTCRを介するシグナル伝達におけるSTAMの関与を検討した。ヒトT細胞株Jurkatを抗CD3単クロン抗体OKT3でインキュベートしたのち、2次抗体で架橋刺激を行い刺激前後の細胞を可溶化した後、抗STAM単クロン抗体TUS-1で免疫沈降しチロシンリン酸化を検討した。その結果、TCR刺激後STAMの強いチロシンリン酸化が観察された。STAMのチロシンリン酸化の経時的変化では少なくとも5分後からリン酸化が認められた。すでにJak3とJak2がSTAMに会合することが明らかとなっており、TCR刺激後これらのキナーゼがチロシンリン酸化することがわかった。さらに、COS7細胞を用いた強制発現系では、過剰発現下ではSrcファミリーおよびZAP-70によってもSTAMがチロシンリン酸化することが示唆された。一方でTCR刺激によるIL-2プロモーターの活性化にSTAMがどのように関与するかを、野生型およびSTAMの変異体を強制発現させた系で解析したところ、野生型STAMはIL-2プロモーターの強い活性化を示したが、SH3領域欠損STAMはこの反応が認められなかった。以上より、TCRを介したシグナル伝達にSTAMが関与し、シグナル伝達にはSH3領域が必須であることが分かった。
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