T細胞受容体シグナル伝達に関わる新規シグナル伝達アダプター分子"STAM"の役割

1998 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 09670327
• 研究機関: 東北大学
• 研究代表者: 田中 伸幸 東北大学, 医学部, 助手 (60280872)
• キーワード: T細胞受容体 / チロシンキナーゼ / シグナル伝達 / STAM / Crb2ファミリー

研究概要

我々はサイトカイン受容体の下流において、Jak2やJak3チロシンキナーゼによってリン酸化を受け、細胞内シグナル伝達に関与する機能分子“STAM"を単離していたが、このSTAM分子がT細胞受容体を介する細胞内シグナル伝達にも関与する可能性を指摘した。すなわち、野生株STAMを強制発現するとTCR刺激によるIL-2発現が亢進し、SH3領域欠損STAM変異体では亢進がみられないことを明らかにした。今回、STAMのSH3領域に会合する新たな分子“AMSH"を単離し、さらにAMSHに会合する新たなGrb2ファミリー分子を単離した。この分子は分子量40kDaで、Grb2と同様にSLP76やLATと会合することからGrf40と名付けた。Grf40はGrb2よりも強くSLP76やLATに会合し、SH2領域欠損Grf40分子を過剰発現すると、TCRによるIL-2発現が抑制された。この抑制はSH2領域欠損Grb2分子よりも強いことが分かった。SLP76やLATは共に、TCRシグナル伝達に必須な機能分子であることが知られている。従来、これらの分子はGrb2と会合することによって、機能すると考えられていたが、本研究から、Grb2よりもGrf40がより重要である可能性が示唆された。

研究成果

• [文献書誌] Asada, H.: "Grf40, a Novel Grb2 Family Member, Is Involved T-Cell Signaling through Interaction with SLP-76 and LAT." J.Exp.Med.in press.
• [文献書誌] Asao,H.: "Hrs is associated with STAM, an signal transducing adaptor molecule : Its suppressive effect on cytokine-induced cell growth" J.Biol.Chem.272. 32785-3279 (1997)
• [文献書誌] Takeshita, T.: "STAM, signai transducing adaptor molecule, is associated with Janus kinases and involved in signaling for cell growth and c-myc-induction" Immunity. 6. 449-457 (1997)
• [文献書誌] Oda, K.: "Induction of IL-1 β converting enzyme-independent apoptosis by IL-2 human T cell lines." Int.Immunol.9. 1303-1310 (1997)
• [文献書誌] Tanaka,N: "Essential requirement of Itk, a T cell specific tyrosine kinase in CD2-mediated IL-2 promoter activation in human T cell line Jurkat." Eur.J.Immunol.27. 834-841 (1997)