研究概要 |
現在までに、mel-18遺伝子が、(1)in vitroで、がん抑制遺伝子としての活性を持つこと、(2)c-myc遺伝子の発現を調節することにより、c-myc/cdc25カスケードを介してCyclin-CDK複合体の活性を制御し、細胞周期を調節していること、(3)さらにこのCDK活性調節を介して、RAG蛋白質(特にRAG2)の安定性を制御することでリンパ球の分化を制御していること(3)BCL-2ファミリーの発現調節を介して細胞死・細胞生存を制御していること、等を明らかにしてきており、さらに詳細な検討を現在行っている。 (1) 細胞周期調節に関する機能:トランスジェニックマウスでは、抗原リセプターからのシグナル依存性の細胞増殖が阻害され、細胞周期のG1アレストが起きた。さらに生化学的解析から、Rbのリン酸化阻害、CDK2,CDK4,CDK6の活性低下、様々なCyclin,CDK,CDKI分子の発現異常が起きていることが判明した。その中でも、mel-18からc-mycそしてcdc25という遺伝子発現の制御経路を発見し、その結果、Cyclin-CDK複合体の活性を調節していることを明らかにした。この経路の存在は、ノックアウトマウスでは逆の現象が起きていることからも証明された(Tetsu et al,Immunity 1998)。この結果の一つとしてRAG2蛋白質の不安定化があり、リンパ球の分化異常が引き起こされることが分かった。(現在論文作成中)。(2)細胞死調節に関する機能:ノックアウトマウスでは、初期分化に必須なIL-7依存性の細胞増殖異常が起きていることを明らかにした(Akasaka et al,Immunity 1997)。現在さらにこの細胞死メカニズムを検討中である。特にBADの発現調節を介して細胞死を制御していることが判明しつつある。この結果から、さらにAkt/PKBによるBADのリン酸化、PDKsやPI3KによるAkt/PKBのリン酸化を制御していることが判明してきている(現在論文作成中)。
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