研究概要 |
我々はこれまでに未熟胸腺細胞の細胞表面抗原を特異的に認識するモノクローナル抗体を作製し、その抗原(IMT-1と命名)の解析を行なってきた(Kishi,H.et al.,J.Immunol.155:568,1995)。今回IMT-1抗原の発現とT細胞クローンの胸腺内選択との関係を明らかにするためにTCRトランスジェニックマウス、RAG2マウス等を用いて解析を行った。胸腺内でT細胞クローンのポジティブ選択・ネガティブ選択が起こるMHCバックグランドのTCRトランスジェニックマウスにおけるDP胸腺細胞上のIMT-1抗原の発現は、クローン選択の起こらないMHCバックグランドのTCRトランスジェニックマウスにおけるDP胸腺細胞上のIMT-1抗原の発現に較べて有意に減少していた。さらに、DP胸腺細胞をαβTCRを介してin vitroおよびin vivoで刺激することによりIMT-1抗原の発現が減少することが明らかになった。また、DN胸腺細胞上のIMT-1抗原もpre-TCRからのシグナルにより細胞表面から消失することが明らかになった。これらの結果は、IMT-1抗原がpre-TCRあるいはαβTCRからのシグナルによる選択を受ける前のDN胸腺細胞およびDP胸腺細胞に発現しており、胸腺細胞がこれらのTCRからのシグナルにより刺激されるとIMT-1抗原が細胞表面より消失することを示唆している(Kishi,H.et al.,Int.Immunol.in press,1998)。IMT-1抗原はDN胸腺細胞のDP胸腺細胞への分化、および、DP胸腺細胞のポジティブ選択およびネガティブ選択を解析する際に有用な指標となると考えられる。
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