研究概要 |
1.異なるMHCクラスI分子間でのペプチドレパートリーの比較 目的 MHCの遺伝子多型性は、進化の過程を通じて維持されてきた。この理由として、異なるMHCが異なるペプチドを提示し、多様な病原体への対応を可能にした可能性があげられる。そこで我々は、ペプチドライブラリーを用いてそれぞれのMHC分子が提示できるペスチドのレパートリーを予想する試みを行った。 成果 3種のマウスMHCクラスI分子(Kb,Db,Ld)について特異性を調べた。自然のCTLエピトープは親タンパク質中に存在するすべての9残基ペプチドの中で、2SD(標準偏差)以上の予想スコアーを示した。また、60余りのペプチドについて予想結合能と実際の結合能を比較したところ、ばらつきは大きいものの両者の間には直線的な関係がみられた。また、任意のペプチドの80%余りについて、解離定数を一桁以内に予想することができた。この予想能の範囲内でKb,Db,Ldに結合するペプチドのレパートリーを比較したところ、相互の重なりはわずかであった。 2.TCRが異なる結合親和性のMHC-ペプチドを見分けるしくみ 目的 TCRが単なるon/offのスイッチでなく、結合の程度を見分けるしくみを探る 成果 ペプチドライブラリーを用いてTCRの特異性を探り、エピトープペプチドの1残基置換体をデザインした。これらに対するCTLの反応性をみたところ、CD8の動員の効率とTCRに対するアンタゴニスト活性の間に関連がみられた。そこで、TCRには会合するがCD8を動員しないリガンドからシグナルがCTLの活性化に及ぼす影響を調べた。その結果、CD8の動員を伴わないTCRへのリガンドの会合は、よほど大量に存在する場合を除いて、CTLの活性化を抑えるようなシグナルを送ることがわかった。
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