研究概要 |
プレT細胞クローン(BTK-24)に対して我々が作成したモノクローナル抗体(MF45)は,その反応性および陽性細胞の分布から骨髄プロT細胞を検索するための有用な抗体であると考えて解析を進め来たが,セルソータを用いて分離したMF45陽性細胞は,T前駆細胞活性を維持しているがプロT細胞の濃縮は認められず,プロT細胞特異的であるとはいえないことが判明した.したがって,当初予定したMF45を用いた骨髄プロT細胞の単離という当初の実験計画は変更せざるを得なくなった.しかしながら、BTK-24の分化増殖における情報伝達系をしらべる目的で行なった実験結果から,百日咳菌毒素(PTX)がBTX-24の増殖を完全に抑制することを発見した.コレラ菌毒素(CTX)はまったく影響を与えないことから,この増殖抑制はPTX感受性のヘテロ三量体G蛋白質のGαiに依存した現象であることが示唆された.この,PTXによる増殖抑制がT細胞系列以外の造血系でも認められるか否かを検討した結果,長期骨髄培養系におけるミエロイド系やB細胞系の増殖には影響を与えないことがわかった.また,T細胞株を含む種々の細胞株におけるPTX感受性を調べたところ,PTXによる増殖抑制はプレT細胞に限定して見られる現象であることが判明した.これらの事実は,T細胞分化のある限られた段階においてGαiに依存した情報伝達機構が必須であることを示唆しており,T細胞分化研究における重要な知見と考える.Gαiにはいくつかの分子種の存在が知られていることから,今後どのようなGαi分子が関与しているか,また関連するレリガンド・レセプター系について詳細な解析を進める予定である.
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