本年度の研究ではまずB細胞下流のシグナル伝達分子としてクローニングしたマウスα4cDNAをプローブとしてヒトα4分子をコードするcDNAをクローニングした。その結果ヒトα4とマウスα4はアミノ酸配列で83%同一で93%保存されていることを明かとした。ヒトα4cDNAの配列に基づいてゲノム遺伝子の一部をクローニングしFISH法によってヒトα4遺伝子がX染色体上に存在することを明らかとした。これらの結果はα4分子が細胞の重要な機能を司る分子であることを示唆する。 次にマウスゲノム遺伝子をクローニングしてすべてのエクソン・イントロン境界をDNAシークエンス法により明らかとし、プライマー伸長法により転写開始点を決定しα4遺伝子には4ヶ所の転写開始点が存在することを示した。5′上流2kbのDNA配列を決定しルシフェラーゼアッセイ法によりα4遺伝子のプロモーター領域が転写開始点の上流263bまでに存在することを明らかとした。 本研究ではα4分子の生体内での機能を明らかにする目的でCre/loxPシステムを用いたコンディショナル遺伝子ターゲティングを行っている。上記のマウスゲノム遺伝子の情報に基づいてES細胞に導入するターゲティングベクターを、PCR法及びサザンブロット法でスクリーニングするベクターの2種類作製した。翻訳開始点を含むエクソン1とエクソン2の両側にloxP配列を導入し、3′側のloxP配列の下流にネオマイシン耐性遺伝子と更にその下流に3個目のloxP配列を導入し相同組み替え体を選別するマーカーとしてDTA配列も導入した。3′の相同領域はPCRでスクリーニングするベクターでは約600bp、サザンブロット法でスクリーニングするベクターでは約4kbpとした。今後これらのベクターをES細胞にエレクトロポレーション法で導入し相同組み替え体を得て遺伝子ターゲティングを行っていく。
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