マウス抗ラットモノクローナル抗体RE2がリンパ球のMHCクラスIを認識することにより補体非依存性に細胞死を導いているのかを確認するためヒトT細胞クローンにマウスMHCクラスI遺伝子をトランスフェクションして細胞死をみようとしたが、まだこのような細胞株の作成に成功していない。しかしこの抗体により一時間以内に90%以上の細胞が傷害されるマウスT細胞クローンMS-S2のRE2による細胞傷害に抵抗性の変異株の樹立に成功した。この変異株TE2はRE2に全く傷害されなくなったが、フローサイトメトリーで解析するとMHCクラスIを細胞表面に発現しなくなっていた。また免疫沈降によりMS-S2細胞とTE2では44Kおよび49Kの分子の発現に差があることが解り、これらの分子のマイクロシークエンスを試みたところいずれも、MHCクラスI分子であるK^kであった。このことからRE2抗体が認識する分子がMHCクラスI分子である可能性はさらに高まった。 この細胞死のメカニズムの解析についてはいまだすすんでいないが、この細胞死が標的細胞内のパ-フォリンを誘導することによって成されている可能性を否定するため、パ-フォリンKOマウスの脾細胞を標的細胞としてRE2抗体による細胞傷害実験を行ったところ、ConAやLPSで活性化してある脾細胞はC3HやB6マウス同様一時間で約60%の細胞が殺されたが、活性化してない脾細胞においてはC3HやB6マウスでは全く細胞死がみられないのに反して、驚いたことに、パ-フォリンKOマウスの脾細胞では全く活性化を受けていない場合においても60%の細胞がRE2抗体により傷害された。このことからRE2抗体による細胞死はパ-フォリンに非依存性ということだけでなく、パ-フォリンKOによって導かれるリンパ球の何らかの活性化も細胞死の感受性に関わっていることが示唆された。
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