ラット抗マウスモノクローナル抗体RE2が活性化リンパ球やリンフォーマ細胞を補体非依存性に、わずか5分でパーフォリンの200倍以上の大きさの孔をあけて殺すことからこの細胞死を解析したところ壊死、アポトーシスでない新しいタイプの細胞死であった。この抗体の抗原を確認するためヒトB細胞リンフォーマ細胞ClRにマウスMHCクラスI遺伝子をトランスフェクションしたところ1時間で約70%の細胞が抗体によって傷害されることが解った。この結果とこの抗体により一時間以内に90%以上の細胞が傷害されるマウスT細胞クローンMS-S2をRE2抗体によって免疫沈降すると44Kおよび90Kの分子が得られ、かつこれらの分子のマイクロシークエンスを試みたところいずれも、MHCクラスI分子であった。このことからRE2抗体が認識する分子がMHCクラスI分子であることが確認された。 活性化されたリンパ球を傷害することから、自己免疫疾患をはじめ、活性化したリンパ球がその病態の本態となる疾患のに対する治療効果が期待された。実際SLEのモデルマウスにおいてB1細胞を劇的に傷害したばかりでなく、肝炎の代表的実験モデルであるConA induced Hepatitisにおいては、B6マウスでGPTの上昇を2000から200以下に抑えることに、僅か1回の抗体投与で成功した。 この抗体RE2の導く細胞死のメカニズムの解析についてはいまだすすんでいないが、今後は他の研究者によるアポトーシスの研究で得られた実験手法や知見を利用して、これに専念したい。また現在進行中であるエピトープ解析に成功したら、ヒューマンのホモローグに対する抗体を作成し、臨床応用への道を一刻も早く開きたい。
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