研究概要 |
ヒト・α1,3フコース転移酵素(以下hFT)は、多重遺伝子族を形成し、互いに相同性の高い5種類のhFTが存在する(Fuc-TIII,IV,V,VI,VII)。それぞれのhFT遺伝子を、Namalwa細胞(ヒトB細胞株)とHeLa細胞にトランスフェクトして安定導入株を得た。folw cytometry解析により、Fuc-TIVを導入した細胞株以外は、sLe^x抗原を発現していることが確認された。但し、使用する抗sLex抗体の種類により、その結合活性は異なった。また、HeLa細胞の酸性糖脂質を解析した結果、Fuc-TVIは比較的短い糖鎖末端にsLexを合成するのに対し、Fuc-TIII,Vは中程度の長さの糖鎖、Fuc-TVIIは長鎖の糖鎖の末端にsLexを合成した(文献BBRCに発表)。Fuc-TIV発現株は、sLe^xを発現しないがLe^x抗原は発現していた。CHO細胞にE-,P-,L-セレクチン遺伝子をそれぞれ導入し、発現させた。CHO細胞をDishに培養し、その上にNamalwa細胞、HeLa細胞を重層し、セレクチンへの結合活性を測定した。結果、Fuc-TIV発現株以外はすべてよくセレクチンへの結合活性を示した。IgGとのキメラになったE-,P-,L-セレクチンを用いて、HeLa細胞上のsLe^xを担う分子とセレクチン結合活性をもつ分子の同定を試みた。結果、Fuc-TVIはsLexを強く合成するが、セレクチンとの結合活性は比較的弱かった。一方、長い糖鎖を合成するFuc-TVIIが最も強いセレクチン合成活性を示し、Fuc-TIIIとVも比較的強い結合活性を示すリガンドを合成した(論文投稿準備中)。
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