研究概要 |
本研究は、原始的有顎脊椎動物である軟骨魚類サメのMHCクラスI遺伝子を詳細に研究し、MHCクラスI遺伝子の脊椎動物における分子進化とその多型獲得機構を明らかにすることを目的とする。サメの典型的MHCクラスI遺伝子の単離:我々は、サメより、細胞外ドメインがα1、α2及びα3ドメインよりなる典型的なMHCクラスI遺伝子の単離に成功した。ノザンハイブリダイゼーションの結果では、単離したサメMHCクラスI遺伝子は腎臓、肝臓、脾臓など種々の臓器でmRNAの発現が確認された。このサメクラスI遺伝子から作られる分子は、抗原ペプチド末端との結合に携わる重要なアミノ酸が全て見いだされ、免疫反応において中心的な役割を有している古典的なクラスIグループに属している分子と考えられる。多型性の検討:22尾のサメのMHCクラスI遺伝子の多型性をRT-PCRを用いて検討した。その結果、α1、α2ドメインにおいて、ヒト古典的MHCクラスI遺伝子に匹敵するほどの高い多型性が観察された。また、多型性獲得機構として、base substitutionと、その後のselectionの他に、exon shuffling,gene conversion等を含むrecombinationのメカニズムが関与している可能性が明らかとなった。また、本研究により、軟骨魚類のごとく原始的脊椎動物において既に多型性を有するMHCクラスI及びクラスIIの分岐が生じていたことが明らかとなった。
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