本研究は、種々の化学物質や生物学的汚染物質による室内空気汚染と小児のアレルギーとの関連性を探るために実施しているものである。研究初年度(平成9年度)末には、一般家庭での化学物質による室内汚染状況を知るために、横浜市磯子区を中心に、アレルギー素因(ぜん息、アトピー)を持つ小児の住む家庭20軒とアレルギー素因を持たない子供の住む10世帯、計30世帯を対象として、室内空気中のホルムアルデヒド、二酸化窒素、揮発性有機化合物の測定を行った。本年度は、調査により得られたデータを分析し、最終年度の研究の方向性を探ることを主目的とした。 測定結果であるが、アレルギー素因を持つ小児の家と素因を持たない家の濃度を比較すると、アレルギー素因を持たない小児の家の濃度の方がアレルギー素因の小児の家より、平均値で見るとわずかではあるが高い傾向が認められていた。しかしこの傾向は統計的には有意ではなく、アレルギー素因のない小児の家庭のうち若干の世帯で非常に高いレベルの濃度が観察されたことによるものと思われる。また差はあったものの、必ずしも高いレベルではないため、アレルギー素因の子供がいる家の方が換気等の対策をとっている可能性も考えられる。いずれにせよ、今後さらなる測定を行うとともに、調査票により収集した家の特徴との関連性、さらにはアレルギーとの関連性、特に時間的関連性などを詳細にさぐっていく必要がある。 本年度は種々の都合により、本来アレルギーに影響が大きく、かつ本研究の主目的である室内の生物的汚染物質、すなわちダニやカビの汚染状況を調べることができなかった。最終年度である平成11年度にはこれらの測定を行い、かつ上記の課題点を検討して研究の総括を行う。 なお、これまでの研究成果は、平成11年8月にスコットランドで開催される、第8回室内空気質に関する国際学会で発表する予定である。
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