研究概要 |
本研究は、種々の化学物質や生物学的汚染物質による室内空気汚染と小児のアレルギーとの関連性を探るために実施したものである。横浜市磯子区を中心に、アレルギー素因(主にぜん息)を持つ小児の住む家庭とアレルギー素因を持たない子供の住む家庭を対象として、室内空気中のホルムアルデヒド、二酸化窒素といった化学的汚染物質に加えて、ダニアレルゲン、落下菌等の生物的汚染物質の室内環境測定を行った。 平成10年3月の室内環境測定では化学的汚染物質濃度にはアレルギー児家庭と非アレルギー児家庭に差は認められなかった。一方平成11年7月の測定では、ダニアレルゲン濃度等に差が認められ、かつ非アレルギー児家庭の方が高い傾向が認められた。またホルムアルデヒドに関しては、アレルギー児家庭の方が高い傾向が認められた。室内環境とアレルギー発症との因果関係を考えるためには、できるだけ発症初期に環境測定を実施すること、あるいは発症前から測定を行えるような種々の条件・環境を整えておくことが必要となることを示しているものと考える。 調査の実施可能性といった制約があったことなどから、対象者本人の素因や他のアレルギー要因を調べていないこと、また対象者選択の方法が必ずしも洗練されたものではない、といった点から考えると、厳密には本研究は疫学調査とは言えないであろう、しかし本研究により、今後アレルギー発症と室内環境を考えていく上でのベースラインデータを得ることができ、かつ研究遂行上の留意点を示すことができたと考える。 これらの研究の成果は,平成11年8月にスコットランドで開催された第8回室内空気質に関する国際学会,及び平成11年12月に東京で開催された平成11年度室内環境学会総会で発表した。
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