研究概要 |
メタロチオネインIIIは従来報告されたメタロチオネインと異なり,中枢神経に特異的に発現している。一方,我々がクローニングしたセレノプロテインP及びその類似蛋白やエズリンは本来末梢臓器で発現が認められたものであるが,中枢神経では特定の核・皮質に局在することを見いだした。そこで,これらの蛋白のプロモーター部位をクローニングし,配列解析を行った。 中枢神経での発現を規定するとされているシス配列は必ずしも存在しなかったため,このプロモーター配列に特異的に結合する蛋白の有無を,ゲルリターデーションアッセイやルシフェラーゼ・アッセイを利用して検索中である。一方,従来末梢組織にしか発現しないとされていた,アデノシンA3受容体mRNAが中枢神経にかなり多く発現することをみいだし,局在を検討中である。また,環境変化に応答するシグナルをとらえるために,実験的遮蔽眼近視を作製し,網膜・神経系で変化するmRNA・蛋白の同定を行った。他の神経系と異なり,通常LPSや炎症の刺激なしでは発現しないとされるiNOS(inducible NO synthase)mRNA・蛋白が網膜内神経では高度発現しており,他のサブタイプである,eNOS(endothelial NOS),bNOS(brain NOS)とほぼ同様の分布を示すが,bNOSのみ外核層にも発現することを示した。近視眼ではiNOSのみmRNA・蛋白とも減少した。この他にもdifferential display法を用い,近視化することで増減するmRNAを少なくとも15種同定しており,網膜機能・近視化との関連を検索中であり,このような眼における変化が中枢神経にどのように伝達されるかも検討中である。
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