研究概要 |
MetallothioneinIII及びSelenoprotein Pのプロモーター全配列あるいは幾通りかdeletionした配列をルシフェラーゼアッセイ系に組み込み、副腎皮質由来PC12D細胞を用い,発現調節の変化を検索中である。PC12Dは神経成長因子(NGF)存在下で神経細胞へ分化することが知られており,NGFの有無によるルシフェラーゼ活性変化をとらえることで,神経特有遺伝子調節因子を見出すことを目的しているが,現在まで特有の超越因子は同定できない。しかしながら,有機シアンであるニトリル化合物はPC12Dにアポトーシスを引き起こすがその作用はNGFによる神経誘導を行うと増強されることをみいだし,同化化合物中毒時の行動異常には手綱-縫線核連絡の神経細胞に生じたアポトーシスが強く関与していることを報告した。また,中枢神経に局在するばかりでなく,環境変化に伴いその発現が変化する蛋白の同定を行っている。アルコール中毒モデル動物の側坐核はアルコール依存症形成の中心的役割を果たすと考えられているので,同部位に特有に発現する遺伝子を単離した。aldehyde reductaseのようなアルコール代謝に直接関与するような遺伝子の他未知のものが約20種単離できたので,機能解析とともに遺伝子発現調節機構の解析を行っている。同様の手法を用い,上述したアポトーシス誘導・非誘導PC12D間や癌細胞-正常細胞間などで発現に差の生じる遺伝子の単離を行っている。前者ではアポトーシスカスケードの遺伝子ばかりでなくEGFを含む成長因子の変化が検出されたので,量一反応関係を検討中である。後者からはredox stateに関連すると思われる遺伝子群をはじめとして多くの遺伝子が単離されており,現在組織内・間分布や機能の解析を行っている。
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