研究課題/領域番号 |
09670356
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
村田 真理子 三重大学, 医学部, 講師 (10171141)
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研究分担者 |
山下 成人 三重大学, 医学部, 助手 (40263024)
川西 正祐 三重大学, 医学部, 教授 (10025637)
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キーワード | がんの化学予防 / 抗酸化物質 / DNA損傷 / 過酸化水素 / 銅イオン / 酸化促進作用 |
研究概要 |
本研究の目的は、がんの化学予防に用いられることの多い抗酸化物質についてヒ卜遺伝子損傷性を検討し安全性を評価することである。がんの化学予防に用いられる抗酸化物質として、β-カロチン、ビタミンA、α-トコフェロール、セレン化合物、尿酸、イソチオシアネート類、等についてそのDNA損傷性を検討した。これらの抗酸化物質と、^<32>Pでラベルしたヒトがん抑制遺伝子p53のDNA断片を金属イオンやNADHなど内因性物質の存在下で反応させ、ポリアクリルアミドゲルにて電気泳動を行いオートラジオグラムを得た。その結果、これらの抗酸化物質は銅イオン(II)存在下で塩基特異性を有するDNA損傷を来すことが明らかとなった。このDNA損傷は、カタラーゼあるいはバソキュプロインにより抑制されたことから、過酸化水素および銅イオン(I)の関与が考えられた。また、calf thymus DNAと抗酸化物質を上記と同様の条件で反応させ、酸化的DNA損傷の指標である8-ヒドロキシデオキシグアノシン(8-OH-dG)生成量を電気化学検出器付HPLCにて測定した結果、8-OH-dGの増加が確かめられた。さらに、ヒト培養細胞(HL60)に抗酸化物質を添加し、一定時間後に細胞からDNAを抽出し、8-OH-dG生成量を測定をしたところ、ビタミンA、α-トコフェロール等の添加で有意な増加が認められた。また、パルスフィールドゲル電気泳動法により、同様に培養した細胞の巨大DNA断片を検出した。以上の結果より、抗酸化物質が酸化抑制作用のみならず、酸化促進作用をも併せもち、過剰の抗酸化物質はDNA損傷性を有することが明らかとなった。今後、さらに抗酸化物質がどのような条件で酸化促進作用を示すのかを解明し、抗酸化物質のがんの化学予防への安全な利用方法について検討する。
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