研究課題/領域番号 |
09670358
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
竹内 亨 大阪大学, 医学部, 講師 (00188161)
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研究分担者 |
竹下 達也 大阪大学, 医学部, 助教授 (20150310)
森本 兼曩 大阪大学, 医学部, 教授 (20143414)
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キーワード | 活性酸素 / 酸化的DNA損傷 / 遺伝子変異 / 発がん / hprt |
研究概要 |
環境汚染物質や植物中の発がん物質が全くなくなってもがんの発生はゼロにはならない。空気中の酸素を消費して生存している生物においては、常に活性酸素が体内で発生しており、この活性酸素ががんを引き起こすと考えられるからである。現在活性酸素による発がんには、2つの過程、すなわちイニシエーションとプロモーションの両過程が関与すると考えられている。しかし哺乳類細胞で、どの程度細胞内の酸化的DNA損傷が増加すれば、どのくらい突然変異頻度が増加するのかは全く判っていない。今年度の研究では、環境中の変異原検出に広く用いられているチャイニーズハムスター由来V79細胞と、光照射によりOHラジカルを産生する光増感物質(NP-III)を用い、種々のレベルの酸化的DN損傷を誘発した。そして、代表的な酸化的DNA損傷である8ヒドロキシグアニン(80HdG)を指標に、誘発された80HdG量とヒポキサンチン・グアニン・フォスフォリボシルトランスフェラーゼ(hprt)遺伝子に生じた変異頻度の関係を定量的に解析した。NP-IIIはUVA照射によりNP-III濃度依存的にV79細胞内DNAに80HdGを誘発した。NP-III 20uM+UVA照射では、対照の15-20倍の80HdGが誘発され、細胞の生存率も約20%まで低下した。しかしこの状態でのhprt変異出現頻度は対照の約3倍と、わずかな増加しか認められなかった。突然変異誘発の陽性対照としてエチルメタンスルフォネートでは著明なhprt変異出現頻度の増加が検出された。またコメット・アッセイで検討したところ、NP-III+UVA照射では、すべての細胞に同程度のDNA損傷(DNA鎖切断)が誘発されることが判明した。これらの結果から、一時的に大量誘発された酸化的DNA損傷は、これまで考えられていたほど変異誘発能が高くないものと考えられた。
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