研究概要 |
1.ポリ塩化ナフタレン類に関する文献調査:ポリ塩化ナフタレン類の環境中濃度,生体内濃度およびその生体影響について文献調査を行った.その結果,(1)廃棄物焼却排ガス中の塩素化芳香族炭化水素としては,塩化フェノール,塩化ベンゼンに次いで多い(数十nmol/Nm^3),(2)環境水中にはppt〜ppbのオーダーで含まれ,魚にはppb〜ppmのオーダーで含まれる,(3)日本人の主な摂取経路は魚肉の摂食だと考えられる.ヒトの脂肪中には数ppb含まれており,その40%以上は1,2,3,4,6,7-六塩化ナフタレンである,(4)ラットにポリ塩化ナフタレン混合物を投与した実験でも,1,2,3,4,6,7-六塩化ナフタレンの残留性が特に高いことが示されている,(5)ポリ塩化ナフタレン類は,ダイオキシン類と同様にAh受容体を介した作用によって生体影響を及ぼすことが示されている.ただし,その作用は2,3,7,8-TCDDに比べるとはるかに弱い,(6)2,3,7,8-TCDDについては,妊娠15日目のメスラットに対する1μg/kgの経口投与で雄の仔ラットにandrogenic statusの発現抑制および明かな雌性生殖器障害を認めた報告が多数ある.以上の文献調査の結果より,妊娠メスラットに対して1,2,3,4,6,7-六塩化ナフタレン1μg/kgを妊娠14日目〜16日目に経口投与し,その雄の仔ラットのandrogenic statusの発現および雄性生殖器系に与える影響を詳細に検討することとした. 2.妊娠メスラットへの1,2,3,4,6,7-六塩化ナフタレンの投与実験:妊娠メスラットに対する投与は終了し,現在雄の仔ラットのandrogenic statusの発現を評価している段階である(雄性生殖器系への影響評価は3月以降,成長段階ごとに実施する予定).現時点では被験物質投与群にandrogenic statusの発現の明かな抑制は認められていない.
|