研究概要 |
先天異常,悪性腫瘍,加齢,免疫異常の相関を解明する目的で、ダウン症児を対象として、細胞生物学的ならびに臨床生物学的検討を行った。ダウン症児由来培養細胞に対する放射線・ウイルス等の環境因子曝露の影響を主として染色体(構造異常・SCE)を指標としてみた。高感受性のあることが判明し、加齢との関係を検討中である。 免疫機能低下を特性の一つとしてもつダウン症候群について、その特性発現のメカニズムを、遺伝的要因と環境要因の交絡作用の立場から明らかにすべく、免疫惹起能に優れる百日咳菌菌体成分(百日咳毒素(PT)または百日咳菌赤血球凝集素(FHA))による抗原感作マウスのリンパ球のサイトカイン産生(IFN-γ、IL-4)を測定し、それによってヘルパーT細胞のサブセット(Th1,Th2)の動態を検討した。その結果、免疫機能低下は抗原依存的なTh1,Th2のアンバランスが関与し、またそれはマウスのH-2ハプロタイプと関連していることがわかった。すなわち、PTおよびFHA刺激を複数回繰り返すと、感作マウスのTリンパ球のサイトカイン産生量およびそのパターンは両者で大幅に異なっており、マウスのMHCによっても異なることがわかった。この知見をもとに、ダウン症患者由来の末梢血リンパ球を用いて、PTまたはFHAによる抗原感作後のTh1,Th2の動態を検討している。なお、感作マウス由来の裸核化Tリンパ球について細胞周期を解析し、これとTリンパ球のサイトカイン産生動態との関連性を調べることにより、本症候群にみられる早老傾向との関連を検討中である。 また、臨床生物学的特性として、本症成人にしばしば認められる青年期「退行現象」を臨床神経学的立場より検討した。その発症にあたり、精神的ストレスの関与、脳内血液循環の変化等の関与が示唆され、さらに検討中である。
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