研究課題/領域番号 |
09670369
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研究機関 | 大阪医科大学 |
研究代表者 |
河野 公一 大阪医科大学, 医学部, 教授 (30111016)
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研究分担者 |
土手 友太郎 大阪医科大学, 医学部, 講師 (10257868)
渡辺 美鈴 大阪医科大学, 医学部, 講師 (30084924)
織田 行雄 大阪医科大学, 医学部, 講師 (80247840)
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キーワード | フッ化物 / 腎毒性 / 腎機能障害 / 近位尿細管 |
研究概要 |
フッ化物取扱い作業者では、生体に対して様々な影響が報告されている。体内に取り込まれたフッ素(F)は、ほとんどが腎臓から排泄されるため、腎毒性に関する報告も多い。本研究では、フッ化物暴露の腎への影響について、近年、近位尿細管障害の指標として注目されているα-glutathion-S-transferase(GST)を中心に、creatinine(Cr)やN-acetyl-β-D-glucosaminidase(NAG)などの腎機能障害指標や、尿中フッ素排泄との関係を検索した。 本研究では一定濃度のフッ素の長時間暴露による腎への影響を把握するため、持続的に静脈内投与を行った。 11週齢Wister系SPF雄性ラット(計19匹)を麻酔下、まず初期利尿を促進するため頸静脈よりシリンジポンプを用いて5mlの生理食塩水(生食)を注入した。これらを3群に分け、コントロール群(6匹)には引き続き生食のみ、F投与群(13匹)には弗化ナトリウム(NaF)を溶解させた生食(F濃度350μg/ml:7匹、700μg/ml:6匹)をそれぞれ3ml/hで6時間持続的に投与した(F投与群の総F投与量は6.3mg、12.6mg)。膀胱内留置チューブによる採尿は2時間間隔で計3回(採尿開始から2時間後(0-2h)、2時間後から4時間後(2-4h)、4時間後から6時間後(4-6h))施行した。測定項目は、尿量、尿中F(イオン電極法)、Cr(Jaffe法)、NAG(MCP-NAG法)の4つとした。 尿量は全群とも経時的に増加したがF12.6mg投与群は2時間以降、他群に比し減少傾向を認めた。尿中排泄F量は、F没与群で0-4hまでは経時的な増加を認めたがF12.6mg投与群では4-6hでやや低下していた。尿中排泄Cr量はF6.3mg投与群はコントロール群に比し明らかな低下を示さなかった。尿中排泄NAG量はF12.6mg投与群において4時間以降急激な増加を示した。以上より、高濃度の暴露であっても持続微量投与では緩やかなFの蓄積により、暴露初期においては腎への急性影響は認めにくいが、暴露過程で尿細管障害を含む急激な腎障害を発症することが認められた。
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